『在中日本人108人 それでも私たちが中国に住む理由』を読みました。
執筆されているのは、中国で商売をされている人、中国人父と日本人母を両親に持つ高校生、アーティスト、外交官、NGO代表などなど。様々な志を秘め、様々な任務を帯び、また様々な出自を持つ在中108人の証言が綴られています。
本書では昨年9月に起きた尖閣諸島問題に端を発する反日デモを軸に、その時中国にいた日本人はどうしていたか、また現地の街や人の空気感は実際どうであったかが、それぞれの立ち位置からリアルに描写されています。
結論から言ってしまえば、やはりメディアが報道していたものと、現実の空気にはかなりのギャップがあるようです。
これは私自身、デモ後の10月に訪中し、同様に実感していました。師父や旧知の友人はいつもと全く変わらぬ様子であるのは予想がつきましたが、街で行き交う人々にしても拍子抜けする程に普通で、あのデモや愛国心発露運動は何だったのだろう、一種の流行やファッションだったのではなかろうか?とすら感じられました。
流行やファッションと言えば、そういう「既製品」をあたかも自身固有の思想・嗜好と勘違いして暴走するというのはどこの国にでもいるもので……。そういう意味では全てとは言いませんが、ニュースに出てくるような極端な事件はそんな人達が勘違い(?)で起こしてしまったものも案外多いかも知れません。
話を本書に戻します。
本書は民間人の目線によるリアルな日中(人間)関係を取り扱ったものでありますが、同時に一人の人間が、中国でどうやって生きてきたか。そしてどうやって生きていくかのドラマが凝縮されており、読んでいて非常に心を揺す振られました。簡単に言えば、早速今後30年の人生計画を妄想してしまった位、「元気を貰い」ました。
一人一人の生き様の多種多様な事。そしてダイナミックな事。ひとつの節を読む度に、その人の人生をもっと知りたくなってくる位、皆さんパワーを持っています。
思うにその力は、もちろんそのご本人が元来持ち合わせていたものもあるのでしょうけれど、またそれは中国というバイタリティー溢れる国で活きるために培われて来たもの。そしてその力を中国が包容していると同時に必要ともしているからこそ、これだけ豊かな色彩となって花開いたとも言えるのではないでしょうか。
(そういう力を持った人は、いづれ日本にとっても財産になるかも?)
まだまだ政府間では緊張のやり取りが続くと思いますが、それは必要な過程として、民間では「普通」にやっていこう。もっと直接会える「隣人」を、いつかは「家族」と言える位になれるよう、積極的に関わっていこう。自分はその為に何が出来るかを考えながら、読んだ一冊でした。
往診先で山形の大きい茄子を頂いたので、麻婆茄子麺。美味しかったです。